2021年に新しくスタートした「muni Art Award 」
厳正なる選考の結果、「グランプリ」(1作品)「審査員賞」(5作品)、来場者の投票によって選ばれるビューワー賞(1作品)が決定しました。
原ナビィ グランプリ・ビューワー賞
木原健志郎 髙島匡夫賞
駒嶺ちひろ 池永康晟賞、井浦歳和賞
岸裕真 諏訪敦賞、北島輝一賞
土井直也 小暮ともこ賞
井越有紀 田中千秋賞
muni Art Award 2021 ファイナル審査の様子【ダイジェスト】
厳正審査の様子、全て見せます! muni art award 2021 最終審査
【30分版】
グランプリ
原 ナビィ
Hara Nabbie
原ナビィ「ヌ ぺろんちょ」
作品コンセプト
クマの持つ本能的な暴力性、 モチーフとして選んだクマはマレーグマといってクマの中では最弱、最小と言われておりP80号程度の大きさしかなく、 オスに特に現れる顔のシワが人が怒りを表している顔に似ていて、 クマとしては小さく、体つきもなんだか人の様で私のテーマとしいてる'暴力とエロ'に合うなと思い選びました。 マレーグマは昆虫を食べるために舌が長く発達していて、 舌で舐めとるように食べるところがなんだか性的に感じ 怒っているような表情、発達した舌、人間のような体つき、クマの中では最弱、最小と言われているが人より何十倍も強く本能のままに過ごしていて 人が本来持っている野性的で暴力でエロが素敵だと思いました。 暴力はダメ、エロは隠すべきもの、抑圧された社会とは違う本能のまま'暴力とエロ'をこれからも描いていきます。
コメント
グランプリありがとうございます!
まさかのまさかでいただけるとは思っていなかったので嬉しいです!とりあえず赤痢匣をご褒美に買いました!
男塾も届いて今読み進めています、男気を沢山取り込んで良い物出します!
更に自分の感性を磨いて、いい作品ができるように精進していきます。
審査員皆様、お手伝いしていただいたギャラリーの皆様ありがとうございました。
搬入を手伝ってくれた父、髪の毛を結んでくれた母、ありがとう!妹といぬも!
審査員コメント
原ナビィほど第一次、第二次、最終と意見が割れた作家はいない。だが何しろ一次審査での秋華洞スタッフの評判は圧倒的に高かった。なぜなら彼女の作品の一点一点の破壊力、そして作品に添えられたコメントの面白さは出色のものだったからだ。だが同時にあまりに出来不出来の差が多い作品の振れ幅から見て、いったいどのような作家なのか、知りたいと願ったし、作品の真意を聞いてみたかった。
最終審査で銀座に現れた彼女の信念の強さ、昭和の文学・文化から幅広く教養を吸収してきた貪欲さ、「伸び代しかない」と自称する自信と軽妙さは審査委員らの共感的な爆笑につながった。何より作品実物の色の面白さ、構図のインパクトは、細部に囚われがちな日本人絵画の限界をふっとばすパワーを持っている。まだ在学中の若い人だが、今回は迷いなくグランプリを与えたい。荒削りな面も目立つが、将来が楽しみな画家である。(田中千秋)
原 ナビィ
Hara Nabbie
プロフィール
2020年 都立世田谷総合高校 卒業
2020年 東京藝術大学 油画専攻 入学 現在同学科在学中
ビューワー賞
北島輝一賞
ファイナリスト
岸 裕真
Kishi Yuma
諏訪敦賞
北島輝一賞
岸裕真「Seeds」
(映像)
作品コンセプト
江戸時代に制作された春画のデジタルアーカイヴを、国際日本文化研究センターの協力のもとでイメージ生成のAI技術を用いて学習し、絵巻スケールで連続的に生成させた映像作品。 抽象化された肉体の蠢きは、身体を持たないAIにとって理解し得ないものだが、私たち人間はたしかに認識ができる。 技術が進歩し世界が情報化されていく中で、人間を人間たらしめるものとは何か、また愛とは、欲とはいかなるもので、それはどのように生まれ、消えていくのかを問うための制作。
コメント
こうしてアワードに応募して賞をいただくこと自体が初めてなので、とても嬉しいです。
自分達の制作に対して、審査員の方々に背中を押していただけたような温もりを感じています。
この度は光栄な賞をいただき、ありがとうございました。モニターの向こう側の友人達にも伝えておきます。
審査員コメント
岸裕真は自らを高次元にある未知の知性と協働する者として、人間の感性に軋み音を立てる企てを実行しているかのようだ。
彼はAIを、人工ならぬ異質な知性をもつ存在(Alien Inteligence)として捉えていることを公言し、魅力的な作品群をものにしており、広く見回してみてもその才能は突出していると思う。
芸術は全ての行為を飲み込み包括する怪物的なジャンルだ。そして人は自分の属する表現領域の存在意義を信じることで制作を維持できるものだが、数多の応募者の中で、岸の作品だけが芸術という枠組みさえも揺るがすような問いと意思を備えていた。(諏訪敦)
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本作家の作品は、半年ほど前に訪れたグループ展で認識していた。
その時の作品は、彼が、やはり画家であるという父親との関わりの映像をニューラルネットワークに記憶させ、
それを想起させることによって、なんとも言えない曖昧な映像を出力する。
この人間の記憶の曖昧さを、仮想的に脳と同じ機構を持つコンピュータ技術を利用して表現していることに心が動いた。
今回の作品は、秋華洞の主力商品である、浮世絵・春画をニューラルネットワークに入力して、やはり曖昧な映像を出力するものであった。
その揺らぎのようなものがその時代経過を感じさせよう。今後が楽しみにな作家である。(北島輝一)
岸 裕真
Kishi Yuma
プロフィール
AIを人を模倣するものではなく、異次元のエイリアンの知性として捉え、その知性を自らの身体にインストール・依代として貸し出すことでデジタルな知性とアナログな身体を並列関係に配置した制作を行う。 制作の中にはしばしば過去の美術史のモチーフが借用され、それが歪な形でテクノロジーと接合されることで、作品空間に介入した鑑賞者は今ここに存在する自己や世界に対する意識が一瞬脱臼するような感覚を想起する。またNIKEやVOGUEにも作品が起用されるなど、多領域にわたり活動中。
2019 年東京大学大学院工学系研究科修了.
2021 年より東京藝術大学先端芸術表現科修士課程在籍.
2019 Eureka展, Gallery Water (六本木)
2020 富士山展3.0 -冨嶽二〇二〇景-, T-ART HALL (天王洲)
2020 荒れ地のアレロパシー, MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY (日本橋)
2021 絵画の見かた reprise, √K Contemporary (神楽坂)
2021 Neighbors' Room, BLOCK HOUSE (原宿)
木原 健志郎
Kihara Kenshiro
ファイナリスト
髙島匡夫賞
木原健志郎「Portrait e」
(30号・キャンバスに油彩)
作品コンセプト
この作品は、人形のポートレートです。私は人形やおもちゃをモチーフとし、そこに子供の頃の感覚や懐かしさなどの私的な意味合いを見出し、描いています。しかし、私的な意味を持ったモチーフであっても、そこには鑑賞者と繋がることができるような普遍性が存在していると思います。
コメント
この度はmuni Art Awardにおいて、高島匡夫賞を頂き大変光栄に思います。このアワードは独自性について考えるきっかけを与えてくれました。これからも、今回の受賞で満足することなく、双子の兄、幸志郎とともに自分たちの表現をぶれることなく貫いていきたいと思います。
審査員コメント
今回の出品作のジオラマの作品については、私の年代にはとてもノスタルジックで面白いですけど、このmuni Art Award のコンセプトには少し合わないかなと思い最終審査にポートフォリオで見たフェイスの作品を持って来てもらいました。
抽象表現のフェイスの作品はカオス的表現で、私が得意とする浮世絵の写楽の大首シリーズに表されるデフォルメのカオス的なイメージに通じるものがあり、なかなか面白い作品群だと思いました。
最終審査で見た何点かのフェイスの作品はモノクロームの抽象表現が心に残るものとなって、今後もかなり期待を抱かせるものかと思い、審査員賞に選ばせて頂きました。(髙島匡夫)
木原 健志郎
Kihara Kenshiro
プロフィール
私の制作は、おもちゃを使ってジオラマを作るところから始まる。その過程を取り入れることで、幼少期に「遊び」で得た感覚をリアリティを持って表現できると考えている。
子供の「遊び」の中には、純粋と暴力が同居し、その二面性は自分の中にも存在する。そんな自分をおもちゃに重ねて描いている。
1997年兵庫県生まれ。
尾道市立大学大学院 美術研究科美術専攻油画コース在籍。
2021年 FACE2021〈SOMPO美術館・東京〉入選
昭和会展〈日動画廊・東京〉入選
三菱商事アート・ゲート・プログラムスカラシップ奨学生(2021年度)
木原 幸志郎
Kihara Koshiro
ファイナリスト
木原幸志郎「New Creature」
(30号・キャンバスに油彩)
作品コンセプト
自作した抽象立体に流動的な絵具を流し込み、それを撮影した写真を元に写実的な油彩絵画を制作しています。
「具象」と「抽象」という要素や、「瞬間」と「永遠」、「在る」のか「無い」のか、などといった対立する要素を一つの画面の中に同居させることで、それらの境界について考えを巡らせることができるのではないかと考えています。二項対立する要素は簡単に言葉で表すことができますが、それらの境界の部分にこそ、言葉では表せない魅力があり、絵画にする価値があると思います。
審査員コメント
木原兄弟の作品世界はコンセプト・表現ともに近いものがあって甲乙は実はつけがたい。むしろこの双子の兄弟をセットにして今は考えるべきなのかもしれないとさえ思う。
さて、木原幸志郎の作品群は絵の具などの素材を使って「抽象的」な造形を作り、撮影をしてそれをまたペインティングで表現をする、というプロセスをたどる。そのことで「平面と立体」「抽象と具象」「虚像と実像」を行き来するテーマ性を持ち、抽象とも具象ともいえない、あるいは両義性を持つ作品を生み出しているという。
テーマ、技術ともに一定の水準を感じさせる作品たちだ。だが、テーマと言うよりできた作品群を見たときに、80年代・90年代にあまた存在した広告表現でのグラフィックイメージに似通ってしまっている弱点がある。また、技術的に言えば実は光沢の表現やそもそもの造形物の設定がごく平均的なものにとどまっているのが残念な点である。
作家本人にしかない、誰にも真似のできない内在的な感情、個人的な体験よりも、外部から収集したデータに基づいて作られたごく標準的なアートの提供にとどまれば、厳しいアート市場を生き延びるに足る個性とはならないだろうから、この兄弟は言葉のあらゆる意味で「大人」になる必要があるのではないだろうか。切れば血が出るようなアート、あるいは反対に切れば鼻水や毒が出てもよいのだが、圧倒的なオリジナリティがほしいところではある。
とはいえ、この若い二人はファイナリストから漏らすのは惜しいと思わせる水準を持っていた事実は重く、その意味で将来に大いに期待したい。(田中千秋)
木原 幸志郎
Kihara Koshiro
プロフィール
画面の中に「抽象」と「具象」、「瞬間」と「永遠」、「真実」と「虚構」などといった対立する要素を同居させることで、それらの境界について考えを巡らせることができる油彩作品を制作している。二項対立する要素は簡単に言葉で表すことができるが、それらの境界にこそ絵画にする価値があるのではないかと考えている。
1997年 兵庫県生まれ 尾道市立大学大学院美術研究科美術専攻油画コース在籍
2021年 The 16th TAGBOAT AWARD 審査員特別賞(徳光健治賞)受賞
公益財団法人クマ財団第5期クリエイター奨学金 認定
井浦歳和賞
池永康晟賞
駒嶺 ちひろ
Komamine Chihiro
ファイナリスト
駒嶺ちひろ「ひとがたシリーズNo.40(ハチ)」
(ぬいぐるみに糸によるドローイング)
作品コンセプト
平成〜令和の現代にあふれるものを代表して七体のキャラクターの人形を選びました。それらは融合し60年代を代表するシンボル的な女性像を世に打ち出した彫刻家ニキ・ド・サンファルの「ナナ」のような人の形に変形しています。これは現代のものを昔の価値観に当てはめて読み解くことや、昔のものを現代の価値観に当てはめて読み解くことについての人の形をしたドローイングです。
コメント
この度はファイナリス選出及び「池永康晟賞」と「井浦歳和賞」に選んで頂きありがとうございました。
色々と個性的な表現をされている方々の中に選ばれて嬉しいです。これからも制作活動を頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします!
審査員コメント
最終選考、駒嶺ちひろの追加作品「Shape of men No.6(目は目に耳は耳に口は口に)」「No.6-1(白黒肖像画シリーズ)」ぬいぐるみを切り刻んでお医者さんごっこのように弄んだ挙く、また縫いあわせ原型を留めぬ変貌した尊顔を、まるで遺影のように描画して納める。なんという残酷で執拗な手間のかかる偏愛であろうか。数多くの応募作家応募作のなかで、作家のどうしようもない性癖や熱が垣間見れたのはこの一点だけであったように思う。入選作のキメラについては私はもうよく解らない。(池永康晟)
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既成のキャラクターぬいぐるみをディフォルメして、そのぬいぐるみをペインティングに起こす。連鎖的なこの行為に現代社会における人と人との関係性をある種簡潔に問題提起している作品はプッとするようなポップでありグロテスクでもある。アーティストとして社会を見る感性に反射神経を審査では感じ、今後の活動への期待を私に持たせた。過去の展示風景を見ても立体作品と平面を展示した空間は世界観をしっかりとコントロールできていて素晴らしいと思った。(井浦歳和)
駒嶺 ちひろ
Komamine Chihiro
プロフィール
1993年 岩手県生まれ
2020年 東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科芸術文化専攻芸術総合領域 修了
2017年 愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻 卒業
主な展覧会
2021年『おおおままごと』(個展)/石巻のキワマリ荘1F GALVANIZE gallery(宮城)
2020年『ルイジトコトナリー類似と異なり』(企画展)/はじまりの美術館(福島)
2020年『「遊園地都市の進化ースクワット作戦会議 in 渋谷」内企画展「内見フロア』(企画展)/RELABEL Shinsen402号室,403号室(東京)
2019年『いつかどこかへ飛んでゆく』(個展)/画廊跡地(東京)
辻 將成
Tsuji Masanari
ファイナリスト
辻將成「YAKUDOW [ R,P,O ] 2021 - Absent body」
(写真 / 溶剤出力 / アルミフレーム巻き込み )
作品コンセプト
可視化された踊りの動きと不可視の身体、一枚の写真の中にあるリアリティーを表現した。私にとってダンスは瞬間芸術で儚いものであり、その一瞬を表現する事で私自身が存在する理由に置き換わることもある。
踊りは映像で残せるが記録という要素だけで無く、瞬間のエネルギーを表現する事を意識して写真で制作している。
躍動し、光を使い空間にドローイングされた作品は、動きのみを写しとった非現実のような写真だが、その場・その時に痕跡を残し、可視・不可視の間で表現された身体を表す作品となる。
審査員コメント
現役のブレイクダンスパフォーマーである辻は、その手足などに光のデバイスをつけてダンスをして、その光跡を撮影して作品とする、という手法を編み出した。ジャクソン・ポロックのドリッピングアートであるとか白髪一雄の足を使ったペインティングの「肉体性」と「一回性」をダンスと写真に置き換えた作品は、造形的美しさを実現している。一方で、彼自身の身体性に依存した作品であることが今後どのように作品展開に影響してくるか、そして写真というそれ自体はいったん肉体性を奪う複製可能な媒体に置き換える事がアートとしての強度を担保するのかという問題は残る。NFTとの親和性などを考えると、より彼自体の肉体の「一回生」をデジタル世界に置き換える作品のオリジナリティなどの将来性を考えて一定の評価がなされるべきであろう。そして作品自体にも、彼の肉体性をどのように作品のエネルギーそのものに反映させるのか、違ったアプローチを追加するべきかもしれない。(田中千秋)
辻 將成
Tsuji Masanari
プロフィール
空間と身体、光をテーマに東海地区を中心に作品を制作しているアーティ ストであり、現役のブレイクダンサー。身体表現 (ダンス ) を軸に時間や痕跡、空間を表現のテーマに、彫刻・インスタレーション・写真・ペインティングなどジャンルにとらわれず、様々な作品を生み出している。
芸術 と自分自身の関係性を模索し、必然的な空間性、可視・不可視の表現、移ろう時間、“儚さ” の表現を追い求め、この先も様々な作品を生み出そうとしている。
2019年 愛知県立芸術大学 博士前期課程 修了
2021年 織部亭 個展 am I - 二つの情景 - 愛知県 一宮
2021年 点と点と線 こまきアートプロジェクト - 愛知県 小牧市 参加
小暮ともこ賞
土井 直也
Doi Naoya
ファイナリスト
土井直也「新・だるまの入れ物」
(シーチング、キャンバス、顔料、糸)
作品コンセプト
先が見えないコロナ渦において、部屋に篭り壁に向って作業を続ける日々は、達磨大師の座禅を彷彿とさせる。
日々座って考えることで自らの思考が拡張し、広がりの先に新たな生物(型)を作り出す。
型を逸脱した先にあるのは、新たな型。それを逸脱すると、その先にまた新たな型が出来上がる。
思考の拡張が身体性を拡張し、概念的入れ子構造を作り上げる。私たちは日々、新たな入れ物となるのである。
コメント
この度は、小暮ともこ賞をいただき、有難うございます。
「新・入れ物作家」と勝手に名乗って、自分なりの手法で制作に取り組んで参りましたが、今回審査員の先生方の前で自分の作品についての考え方など発表できたことは、とても良い機会になりました。
ファイナリストとしてご評価いただいたこと、また、このような賞をいただくことができ大変励みになります。今後も新しい入れ物作りに真摯に取り組んで参ります。有難うございました。
審査員コメント
身近でありきたりな物のカタチが、ニュートラルな色合いと心地よいステッチによって可視化され分解された作品と向き合いますと、あらゆる物は表層的なのだと思えてきて、これからは怖いものがなくなるような感覚に襲われました。
逹磨はラッキーアイテムで思い入れがちな物なだけに、分解した時の意味ナシ感が存分に感じられ、さらにそれをまた縫い合わせた意味不明キャラを誕生せる土井さんの感性に触れ、いかなる厄介もフラットからの再構築、つまり別の道が必ずあることに結びつけられ心に落ちました。表現や展示方法には改善すべき点も多々見受けられましたが、彼の筋の通ったコンセントには無駄がなく揺るぎないものを感じましたので、審査員賞とさせて頂きました。(小暮ともこ)
土井 直也
Doi Naoya
プロフィール
「人はモノを見たとき、瞬時にそれが何であるかを理解しようとし、そこには本質があると考える。しかしモノは多くの人間の「認識」という名のレイヤーによって作られており、その中心(本質)には何も無い。私たちの周りに存在するモノは、一時的な表面をもった単なる入れ物に過ぎない」
土井は、目に見える相対的な事象に対して、パラドキシカルな本質を見出し、新しい入れ物として制作している。 パターンカッティングの技術によって、オブジェを解体・再構築することで、「仮」の状態を可視化し、物事の価値や本質について考察、制作している。
衣服の仮縫いで使用されるシーチングを主な素材として使用し、プリントや製図によるアートワークを制作。パフォーマンスまですべてを行う。
1984年北海道生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、企業パタンナーを経て渡英。留学先での語学に対するコンプレックスから、「モノ」の曖昧さと信憑性について研究。帰国後は東京を中心に制作、発表を続ける。
個展
2021 免疫の入れ物/賢者のローブ / JR tower ART BOX(札幌)
2020 新・赤星の入れ物 / Free Information Gallery (札幌)
2020 gallery neo × GalleryKINGYO共同プロジェクトVol.3「新・虎の衣を借りて着る」/ GALLERY KINGYO(東京)
2017 Transition / GALLERY GALLERY(京都)
松本 千里
Matsumoto Chisato
ファイナリスト
松本千里「雲脈を絆して」
(ポリエステル布、ミシン糸、電動機器)
作品コンセプト
これは手絞りの粒を集積させた作品です。膨らんだ形は雨粒をため込んだ雲を思い浮かべます。作品は小雨が降るように個々が震えていたかと思えば、突然落雷したように全体が連動することもあり、不規則で滑らかな動きは生命体をイメージさせます。
ひとつひとつの絞り粒は独立した存在でありながらも、大きな雲脈として息づく姿からは、私たちの人間のように、寄り添い呼応しあって生きているみたいです。
審査員コメント
松本千里は染織技術をバックボーンに、伝統的な「絞り」の制作過程で現れる、固く巻き上げた突起のひとつひとつを人間に見立てて、その膨大な集積物をもって空間を支配するような制作で評価を積み上げてきた。
応募作は打って変わって展示台で鑑賞するSoft sculptureの趣だが、震えるように蠢いている様は不穏で、増殖する雲や海中の刺胞動物を思わせる。彼女はコロナ禍の日々の中で「社会とのつながり」を見つめ直しながら、柔らかな手仕事と冷静にプログラミングした電子機器を組み合わせて、工芸と工学のハイブリッドを試み、メディアアートの表現領域へと果敢に踏み出している。(諏訪敦)
松本 千里
Matsumoto Chisato
プロフィール
1994年 広島生まれ
2020年 広島市立大学芸術学研究科博士課程前期課程 修了
2021年 広島市立大学芸術学研究科博士課程後期課程 在籍
伝統的な染織技法を学び、インスタレーションやパフォーマンス活動など、素材と技法に根差した現代に
おける新しい表現を挑戦し続けている。絞りを人に見立てた「個と群衆」をテーマに抽象的な空間造形を
通して現代社会に息巻くエネルギーを作品に込めている。
展覧会・活動歴
2021年「東京アートフェア FUTURE ARTISTS TOKYO2021」東京/ 東京国際フォーラム
「Azure Hiroshima Base オープニング記念アート展」広島/Azure Hiroshima Base
「WIRED GENERATIVE - アウトオブダークネス」WIRED WEB メディア公開/HP
2020年「六甲 ミーツ・アート 芸術散歩2020」神戸/ 六甲山
「第23回広島市立大学芸術学部卒業・修了作品展」広島/ 広島市立大学
「KUMA EXHIBITION2020」クマ財団WEB メディア公開/youtube
「グループ展-vigor」東京/GALLERY ART POINT
2019 年「2019 金沢世界工芸コンペティション」金沢/ 金沢21世紀美術館
「クマ財団クリエイター奨学金 第3期奨学生」合格
「第3回独立行政法人国立病院機構呉医療センターコンペティション」広島/ 医療センター
「アートフェア東京2019 Future Artists Tokyo 展」東京/ 東京国際フォーラム 他
受賞歴
2020年「六甲 ミーツ・アート 芸術散歩2020」公募大賞 準グランプリ
「第23回 広島市立大学芸術学部卒業・修了作品展」優秀賞
2019年「2019 金沢世界工芸コンペティション」入選
「第3回独立行政法人国立病院機構呉医療センター学生対象コンペティション」優秀賞
2018 年「第21回広島市立大学芸術学部卒業・修了作品展」優秀賞・買い上げ賞
「2018年度広島市立大学学長奨励賞」受賞 他
井越 有紀
Ikoshi Yuki
田中千秋賞
photograph : Kasumi Yasuda(Amejika)
井越有紀「ひとつのなかにふたつある」
(ナイロンと綿によるスタッフィング)
作品コンセプト
かくす けす かくす あらわれる
て あし おと みみ
め ふれる
ひとつの なかに ふたつ ある
ふたつ ある ひとつ は
おなじ べつの ひとつ
審査員コメント
ウサギの頭がふたつあわさって、小さな手が二組生えている、やわらかく小さな作品。まるで未組成の生き物を母胎から取り出して並べたような作品は原初の生命のような静かな威厳をたたえている。
井越は、10年余りの活動歴だが、一貫して人と動物たちの生命の中身を取り出して見せるような繊細な仕事をしてきている。生き物の持つやわらかさ、温かみを感じさせる作品群だが、一方で奇妙な形と一種のユーモアのようなものがこれらのアートとしての成立を担保している。
残念ながらファイナリストの選には漏れたが、北海道での活動が多い彼女の世界を全国区で知らせる意義を感じて審査員賞とさせていただいた。(田中千秋)
井越 有紀
Ikoshi Yuki
プロフィール
1981年、北海道札幌市生まれ。同地を拠点に活動。
2004年、武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科ファッションデザインコース卒業。
人体や鳥などをモチーフとし、繊維素材に綿を詰めて縫い合わせた立体作品を制作。
素材が持つ柔らかい性質を活かし、生命に触れた時に感じる温かさや存在感を表現する。
略歴
<個展>
2018年 「日を歌う」 ギャラリー犬養、札幌
2019年 「てのひらの種」 TO OV cafe / gallery、札幌
2020年 「おなかのなかに海がある」 ギャラリー犬養、札幌 他
<グループ展>
2020年 井越有紀・高橋幾郎 二人展 「おとのかたちから」 ギャラリー犬養、札幌
2020年 札幌国際芸術祭2020(開催中止) 札幌
2020年 「札幌ミュージアム・アート・フェア 2020 ‒ 2021」(ギャラリー犬養から参加)
本郷新記念札幌彫刻美術館、札幌 他